2011年12月13日火曜日

心臓が原因で起こる脳卒中

こちらも、講演会で聞いてきた話、+パンフレットをまとめました。

脳卒中には、脳梗塞(脳の動脈が詰まって血が途絶え脳細胞が死ぬ)、脳出血(脳の血管がもろくなり破れて出血する)、クモ膜下出血(脳動脈瘤や脳の動脈静脈の奇形が破裂してくも膜と脳の間に出血する)があります。

脳梗塞には、ラクナ梗塞(脳の細い動脈が詰まる)、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化により比較的太い動脈が詰まったり狭くなったりする)、心原性脳塞栓症(心臓の中に出来た血栓が流れてきて脳の動脈を閉塞させる)があります。他に少ない割合で、動脈解離、もやもや病、血管炎、髄膜炎、経口避妊薬、凝固異常症などがあります。

心原性脳梗塞は脳梗塞の27%で、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞とほぼ同等の割合を占めますが、他の脳梗塞より死亡や寝たきりなど重度障害となる割合が高いため、予防が重視されています。

心疾患による心原性脳梗塞では、抗凝固療法を行うための診断が重要となります。脳梗塞種類で、再発予防は異なります。ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞では血小板の機能を抑える薬を使います。心原性脳塞栓症では、凝固機能を抑える薬を使います。

心原性脳塞栓症を起こす心疾患では、心房細動が最も多いです。心房細動をもつ患者さんには、高血圧症、冠動脈疾患、心不全、慢性呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症、弁膜症があります。心房細動が見つかったら、まずは基礎疾患を確認し、あれば治療する必要があります。

心房細動には、発作性心房細動(発症7日内で自然に停止する)、持続性心房細動(発症7日以上持続し除細動が可能)、永続性心房細動(除細動が不可能)があります。いずれの心房細動も、脳梗塞を起こす危険度は変わらず高いです。除細動というのは、薬や電気ショックで正常な心臓のリズムに戻すことです。

若い人で、脳梗塞を起こすリスクがなく、心機能に問題なく、心拍数が正常範囲であれば、薬を飲まずに経過を見ることができます。しかし、1年に1回はそれらの条件を変わらず満たしているか病院で確認する必要があります。

自覚症状がある、心不全を起こしそうもしくは起こしている場合には、除細動を行ったり、薬で脈拍数を減らしたりします。脈が少ない心房細動で、失神などの症状があるときは、ペースメーカーを植えこむ必要があります。

一番の問題は、心不全を起こさないための治療に加え、脳梗塞を予防することです。心臓のリズムや脈拍数をコントロール出来ていても、この治療は必要です。心不全(1点)、高血圧(1点)、年齢75歳以上(1点)、糖尿病(1点)、脳梗塞や一過性脳虚血発作(2点)のいずれかがある人、特に2点以上の人は、凝固機能を抑える治療を考える必要があります。

1年間に脳梗塞を起こす確率は、0点で1.9%、1点で2.8%、2点で4.0%、4点で8.5%、6点で18%と高くなります。起こした時の重症度は点数とは関係ないそうです。

凝固機能を抑える薬は、現在ワルファリン(ワーファリン)が主流ですが、ダビガトラン(プラザキサ)も最近選択肢の一つとして上がっています。凝固機能を抑える薬は、メリット、デメリットのバランスが難しいですが、やはり、脳卒中の予防として必要なお薬です。

ちなみに、昨日の医局会では、ワーファリンの内服量が変わらず、安定している人のINR確認の採血は、3ヶ月に1回も1ヶ月に1回も変わらないと思われる論文が紹介されました。2年間の短期間試験ですが、血液検査も少しですが侵襲ある検査ですから、必要以上の検査はしないよう心がけます。