終末期、看取りについて

二次救急病院から多くの患者さんを看取ってきました。
多いときには年間50人ほど看取ってきました。その時は、1週間に1人亡くなる計算になります。ただ、救うことが出来た(延命が出来た)患者さんもいますので、亡くなった数以上に終末期の患者さんには関わってきました。

【看取りのスキル、技術】
医療関係者以外の方はご存じないかもしれませんが、看取りに関しても医療のスキルが必要です。
例)
・麻薬の使い方、鎮静の使い方
・治療の辞め時
・点滴の辞め時、減らし時
・家族が納得のいく治療、緩和をすること

佐賀記念病院で研修医教育、医学生教育をしてきたときに驚いたことが「看取りをしたことがない」ということです。勘違いしてほしくないのは、やる気がないということではありません。
佐賀大学医学部附属病院や好生館などの教育機関が高度医療を提供するようになり、
厚生労働省の政策で短期間で退院することを求められ、
看取りがしたい、自分がみたいと思っても「制度上出来ない」ようになってきました。
事実、自分が大学病院で働いていたときには半年で一人も看取りませんでした。

つまり、大学病院で働いていると看取り、緩和のスキル、経験は乏しくなります。

【在宅(自宅、施設)で看取るということ】
救急病院での看取りの悪いところは、
・制度上2週間前後で退院を求められる(極端に言えば治すか死ぬが求められる)
・始めましての医者、看護師に対応される(関係が希薄な人にわがままが言えますか?)
・入退院が多い中ので、○○さんという認識がしにくく、××の病気の人という認識になる傾向がある
・家族は通院で時間をロスする(その時間を面会時間にできませんか?)
・管理される環境になる(ミトン、抑制などを含む)
・本人は精神的に混乱する

在宅の看取りの悪いところは、
・介護負担がある(ヘルパーさんなどを状況に応じて増やしますが)
・状況が見えるので、不安が強いと辛い(在宅のほうが感情が和らぐという研究もあります*1)
・スタッフが急には来られない(在宅でも救急車と同じ程度の医療提供スピードはあります)



どちらが良いかは個人の価値観によります。
アンケート調査をもとにすると一般的には在宅の環境のほうが良いと思われます。

【参考資料】
ホスピス財団
https://www.hospat.org/departure.html
*「旅立ちのとき」「これからのとき」などの小冊子がダウンロード出来ます。
家族や本人が聞きたいこと、知りたいこと、よくある質問が掲載されています。

*1 療養場所が quality of death and dying と遺族の 健康に及ぼす影響に関する研究 羽多野 裕

記載:江口 仁