2011年9月27日火曜日

2型糖尿病患者さんが定期的に通院すると・・・

9月にポルトガルで行われた、欧州糖尿病学会で、糖尿病患者さんが定期的に通院してプライマリケア医にかかると、心臓血管系の病気(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞)にかかる確率と、それで死亡する確率が下がる可能性があることが発表されたそうです。

発表では、心蔵血管系の病気を持っていない2型糖尿病患者さん約3000人を4年間追跡したそうです。その中で、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を起こした人は48人、頭の血管が細くなることが原因の脳卒中が起こった人は34人、手足の細い動脈が細くなって痺れたり歩きにくくなったりする病気は8人、心筋梗塞などで死亡した人は5人だったそうです。1000人の患者さんが1年間で何人病気を発症するかに計算し直すと、心筋梗塞や狭心症などは4人、頭の血管の病気は3人、手足の細い動脈の病気は1人、心筋梗塞などで死亡する人が0.5人です。

普通の糖尿病患者さんでは、報告されている論文にも寄りますが、1,000人患者さんがいれば、1年間に、心筋梗塞や狭心症は10~30人、頭の血管の病気は6~11人、手足の動脈の病気は2~4人、亡くなる人は2~8人います。明らかに、きちんと通院している患者さんを追跡した方が、確率が低くなっています!!

この前参加した講演会では、糖尿病患者さんの寿命(マイナス10年)が、なかなか普通の人に近づかないと聞いており、少し残念に思っていましたが、通院すれば、ちゃんとこれから病気が起こる確率を減らしているということですね。努力は無駄じゃないということです!

糖尿病は、不規則な仕事やストレスのある生活がすぐ影響しますし、コントロールするのが難しい病気だと思います。遺伝や体質の影響もあり、必ずしも生活習慣だけが問題ではないこともあります。薬の副作用や、インスリン注射は、抵抗があったり、痛かったりで大変だとは思いますが、糖尿病患者さん、一緒に頑張りましょう!

プライマリケア医では、血糖だけでなく、血圧、コレステロール、体重など、病気を発症する確率を上げる原因についても包括的に診ます。プライマリケア医としても頑張りたいところです。

また、病気を起こる確率を見てみると、ぽっくり死亡の可能性より、断然、病気を持ちつつも仕事する、生活する可能性が高いです。当たり前と言えば、当たり前ですが、ぜひ、放置されず、諦めず、お医者さんにかかることをお勧めします☆

2011年9月20日火曜日

合格!

日本内科学会認定内科医に合格しました。
晴れて認定内科医となりました。
ご協力頂いた先生方、ありがとうございました。

2011年9月1日木曜日

こつこつ研究会に行ってきました。

骨粗しょう症の研究会があるというので、身長短縮と胃食道逆流について研究している兄Drに便乗して行って来たら、VIPな先生の集まりの小さな研究会で、場違いな感じになってしまいびっくりしました。が、勉強になりました。

骨粗しょう症は、骨密度が低下している状態、もしくは、骨が弱って骨折した状態です。骨は、骨を構成するカルシウムやミネラルが詰まっていますが、「骨密度が低下する」とは、そういう構造が少なくなってスカスカの状態です。

腰の曲がり方には、
● 円背  猫背。胸の骨が主に曲がっている。
● 凹円背 猫背+腰が前に出る。
● 全後湾 全体的(腰から胸にかけて)曲がっている。
● 亀背  腰が曲がっている。
という分類があるそうです。最も具合が悪く、生活の質が下がるのは、全後湾です。亀背は、最も痛いそうです。

在宅の高齢者の2~3割は必ず転倒するそうです。
 →転倒した高齢者の1割は、必ず骨折をするそうです。
  →その一部が寝たきりになってしまうのですが、その7割は太腿の骨折です。

転倒するだろうと予測される因子
● 過去に転倒をしたことがある人は、他の人の5倍、転倒する可能性がある。 
● 円背の人は、他の人の3倍、転倒する可能性がある。
● 歩く速度が速い人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。
● 杖を使う人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。
● 5つ以上の薬を飲んでいる人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。


腰の骨を折るだろうと予測される因子
● 既に骨折している椎体の数
● 腰の骨の骨密度

骨粗しょう症を疑う因子(今回の講演会では出ませんでした)
● 年をとる
● 早くに閉経した
● BMI20未満(BMI=体重kg÷身長m÷身長m)
● 骨折、骨粗しょう症の家族がいる
● カルシウムが足らない
● 喫煙
● お酒の飲みすぎ
● コーヒーの飲みすぎ
● 運動不足
● 日に当たらない

腰の骨の骨折は、胸の骨の骨折より重要です。
 椎体の容量は、胸→腰に行くほど大きくなるからです。
 骨折した後、起き上がれるようになるまでの日数は、
  ① 腰 が最も時間がかかり、胸の骨折より時間がかかります。
  ② 太腿の骨の胴体に近い部位の骨折 がその次に時間がかかります。
  ③ 胸 
  ④ 手関節

腰の骨の骨折した個数よりも、腰の骨がどの範囲まで動くか(可動性、柔軟性)が生活に影響する。
骨の可動域の影響は、年齢、骨密度、後湾の角度、握力、胸椎の骨折は関係ないようです。
背筋力が上がると、生活の質は上がるそうです。

腰の骨の骨折の後には、体重や重力、負担をかけない、非加重安静が大事だそうです。非加重安静をしないと、骨の治癒・癒合が途中で止まり、治らないことになります(偽関節)。必ずしも、安静にしなければならないこともないようですが、ステロイドを飲んでいるなど、危険が高い人は、安静にしていた方が賢明の様です。

腰が曲がる理由には、腰の骨の骨折以外にも、加重で潰れたり変性したりするようなこともあるみたいです。

椎体の骨折は、背筋運動で予防出来るそうです。
2年間の背筋運動を、1日10回、1回5秒する実験では、
4人に1人は脱落しますが、生活の質を改善し、痛みを改善したそうです。
背筋運動とは、お腹に枕を当てて背を伸ばし、頭・背中・おしりをまっすぐに維持するという運動です。
既に背が曲がっている人は難しいので、しっかりした椅子(倒れない)に深く腰をかけ、頭の後ろに手を組んで、背もたれに寄りかかりながら背を伸ばす運動や、壁に向かって立ち、両腕を持ち上げて両手を壁に充てて背を伸ばす運動などでも良いようです。
背筋運動は、腰の可動域は増やしませんが、生活の質は改善します。痛みにも効果があるようです。

骨粗しょう症は、骨折でもしないとなかなか調べない検査ですが、大事な病気なので、腰の曲がった人を見つけたら、検査をしようと思いました。また、腰の曲がってイタイイタイ、という人を見つけたら、背筋運動を教えようと思いました。

腰の骨の問題なので、専門は整形外科ですが、当院でも骨粗しょう症の検査やお薬の処方は出来ます。ご相談下さい☆