B型肝炎ウイルスは、C型肝炎ウイルスとともに、感染すると慢性肝炎を起こしやすく、肝硬変や肝がんとなる確率を上げるウイルスです。
B型肝炎ウイルスの感染の仕方には、垂直感染(母子感染)と水平感染(母子感染以外の感染)があります。尿、唾液、涙などの体液に存在し、体液同士の接触で感染します。
母子感染は、感染した母親から子供が生まれる時に感染しますが、1985年に母子感染対策が行われ始めて以降、減っています。しかし、母子感染での感染者は、B型肝炎の65%と言われ、内32%は予防を行われていたそうで、未だに大きな問題であると感じます。水平感染は、輸血による感染は有名で、過去には予防接種の注射器の使い回しによる感染も言われていましたが、現在ではそのようなことはありません。最近問題となっているのは、性交渉による感染です。不衛生なピアスの穴あけ、刺青からも感染します。その他、薬物常習者の注射器の共用、医師や看護師の針刺し事故なども水平感染に含まれます。また、最近は、父子感染も言われています。(子供の感染経路の1割くらいで、過去より増えているようです:ネット調べ。)保育園内で感染の可能性も報告されています。
B型肝炎ウイルスの中にも種類があり、中でも遺伝子型Aは、若い人で感染が拡大しています。B型肝炎ウイルスの感染拡大や肝炎、肝硬変、肝がんを阻止するには、まずは母親の感染予防(性交渉時の感染予防、感染している場合は治療)、次の関門は出産時の感染予防(免疫グロブリン、ワクチン)、次の関門は子供の感染前のワクチン接種、次の関門は子供の性交渉時の感染予防、子供が感染した後の治療、となると考えます。
コンドームの使用で、性交渉時の感染は「ある程度」防げます。(どの程度かは調べ中)
母親世代の治療は、妊娠可能な年齢や治療の副作用、治療継続期間の重要性を考えるとなかなか厳しそうです。しかし、感染の事実や子供に感染する可能性を知っておけば、感染の拡大や、子供への感染対策にもつながります。
出産時の感染予防は、現在行われていますが、数%の確率でキャリア(血中にウイルスがいる状態)となるそうです。何故かは原因解明中で、胎盤を介してではなく、産道で体表から血液へ感染するのだろうと言われます。日本では500~700人がキャリア化しているそうです。
感染の予防はHB免疫グロブリンとHBワクチンで行われますが、その方法は、統一されていないようです。HB免疫グロブリンの1回もしくは2回打ちでは、HBV-DNAが血液中にある(=キャリアの)母親からは、子供は10%くらいが感染してしまいます。
血液検査でHBe抗原(血液にいるウイルスの量の1指標)が陽性の母親は、子供に感染しやすく、HB免疫グロブリンとHBワクチンの併用で感染を予防しても、5%くらいは子供がキャリアになってしまうそうです。
免疫グロブリンは、生まれた子供へ1回もしくは、2回打ちますが、日にちを空けると7~8ヶ月でHBs抗原が上昇し始めるとのことであり、打つスケジュールは大事です。
また、病院実習に入る前の学生には、10%くらい、ワクチンに反応しない体質を持つ人もいて、追加接種や、ワクチンの種類の変更、皮下接種を皮内接種に変えてみたりするそうです。筋肉注射の方が抗体を作れるということですが、何故か(痛い?副作用の心配?)日本では主流でないようです。
ワクチンを3回接種しても、抗体価が100以下の人は3年で陰性化、1000以下の人は5年で陰性化するということで、追加接種の必要性も言われています。しかし、罹患期間が短くなるためか、明らかな肝炎は起こさない、感染しても発症しない可能性も高いと言われ、追加接種は必要ないという意見もあるようです。透析や免疫不全の人には、追加接種は必要という認識は定着してきている様です。デノボ肝炎(肝炎以外の疾患の免疫を抑える治療薬で起こる肝炎)の予防に追加接種が必要かどうかは、まだ検討していかなければいけない事項である様です。
B型肝炎ウイルスのワクチン接種には、検査も合わせると概算2万円くらいかかるみたいです。佐賀県の子供1学年約1万人に打つとなると、2億円、毎年、となるとかなりお財布がきついのも分かる。。。一部助成や、限定助成が検討課題でしょうか。しばらくはワクチン接種を各自で検討してみる必要がありそうです。
もちろん、肝炎ウイルスに感染しているかどうかの検査も受けて下さい☆
予約、治療を受けるなどの同意をすれば、当院でも佐賀県内の人は無料の検査が可能ですが、もう少し敷居を低くする方法を考えてみます。
※ 九州B型肝肝炎フォーラム(2012年1月7日)に参加して