2015年11月17日火曜日

ぽっくり逝く、ピンピンコロリ(PPK)のためには……

今日は終末期のお話です。

多くの皆さんの終末期の目標であるピンピンコロリ
寝たきりになりたくない、家族に迷惑をかけたくないなど様々な理由があるでしょう。

さて、どのような疾患であればピンピンコロリなのでしょうか?
医療論文の大家JAMAからEnd of life、つまり終末期のパターンをご紹介します。

疾患によって、悪くなる経過が違ってくるのです。
その表がコチラ↓↓↓


縦軸がFunctionつまり機能を表しています。分かりやすく言えば、体力と言えるでしょう。
体力の低下とともにできることが減っていきます。(例えば家事、外出、仕事など)
横軸がTime。これは簡単で時間の経過ですね。

各題目は置いておいて、どれがピンピンコロリと言える経過なのでしょうか?





見てのとおり、左上と右上ですね。まずはこちら二つから解説していきます。

左上はSudden death。これは突然死と呼ばれるものになります。
疾患でいうと、大動脈解離や心筋梗塞、くも膜下出血などが多いと推測されます。
そして、疾患以外でいうと事故。ですね。

本人はほとんど苦しむ時間はなく、まさにピンピンコロリなのですが、周りは非常に大変です。

まず、ほとんどが検視となります。つまり、警察が介入するんですね。
痛くもない腹を探られる(家族が殺したのではないかなど)ことになりますが、検視をきちんとしておかないと本当に他殺がのさばりますから重要なことです。

次に経済的なものですが、銀行が凍結されたりと急に動き回ることになります。

え、家族の心情は???と、聞かれると個人的な印象ですが、比較的速やかに受け入れれる人が多い印象があります。ただし、事故は違う印象で、相手への恨みなどが残ることも多そうです。

まとめると、突然死は死に方としては本人は楽ちんで家族や周囲が大変ということになります。

右上はTerminal illness。直訳すると末期の疾患です。こちらは多くが癌、悪性腫瘍です。
比較的元気な時間が続くものの弱りだしたら早いというパターンです。
本人は苦しむ時間や体力が低下する時間が少しあります。
体力が低下する中でもどかしさや悔しさ、不安感なども出てきますが、そういっている間にお迎えがきてしまうことが多いです。

原疾患だけに長期間体力低下が続くということはあまりなく、比較的ピンピンコロリと言えるでしょう。

左上の突然死と比べて、受診していることが多く検視にならないですし、経済的な問題も事前に少しは対応できることが多くなります。

家族の心情は左上と比べると受け入れきれない人が多い印象が強くなります。
まだ、親孝行していないのに……的な後悔が出てくることも多いです。
(親孝行するならお早めにのブログもご参照ください。http://eguchiclinic.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

と、言うことでピンピンコロリと逝くならば、
心筋梗塞、くも膜下出血、大動脈解離などの疾患か悪性腫瘍が中心となります。
しかし、疾患は選べませんし、必ず死ねるとも限りません。
(心筋梗塞の急性期の死亡率は確か5-10%くらいです)

と、なると悪性腫瘍なんですね。
癌はこれから2-3人にかかる疾患と言われていますから、こちらはかかれる(笑)可能性が高いです。
つまり、ピンピンコロリといくために確率が高いパターンは癌に罹患した後緩和ケアのみを受けるパターンかと考えています。

注意)癌を治療しないことを勧めているわけではありません!!!!!

そういう選択肢もあるということです。


さて、では、左下、右下も見ていきましょう。

左下はorgan failure。直訳は臓器障害です。これが多いのは心疾患や、肺疾患となります。
心疾患でいうと高血圧性心臓病や弁膜症、肺疾患でいうと肺気腫や間質性肺炎などが多い印象です。

こういった疾患は、心不全の急性増悪や肺気腫の急性増悪を繰り返しつつ、徐々に体力が低下していきます。
そして、マーフィーの法則(科学的ではないですね 笑)のお決まりのように、
「また、同じ疾患で入院やね。また、2週間くらいで帰れるね」
と、慣れてきたときに耐え切れずに亡くなるのです。
医者も「死ぬかもしれない、死ぬかもしれない」と、言い続け、言い疲れてきたころに亡くなるというオオカミ少年のようなお話になるのです。

こういった疾患は医者も引き際が難しい疾患になります。どこからが延命治療かの線引きも難しい疾患です。

最後に右下です。右下が一番ピンピンころりではないですよね。
Frailty。これは直訳すると虚弱。
疾患として多いのは、老衰や認知症ですが、ロコモティブシンドローム、サルコぺニアなどの筋力低下(と、それに伴う骨折など)もよく見かけます。
要介護状態が長く続き、生活レベルも徐々に下がっていきますが、問題なのはFunction、体力が戻ることはまれであることです。

以上、ピンピンコロリのために注意すべきは、
動脈硬化の原因となる疾患のコントロール
禁煙
定期的な運動習慣を維持
することなのでしょう。

Frailtyは今年度の個人的ホットトピックですから、後日フレイリティサイクルと一緒に紹介したいと思います。

記載:江口仁