2011年11月22日火曜日

糖尿病で起こる神経の病気

糖尿病で起こる神経の病気について講演を聞いてきました。

糖尿病は神経を障害します。感じる神経(感覚神経)、身体を動かす神経(運動神経)、意識しないで身体のバランス(発汗、腸の動き、血圧など)を整える神経(自律神経)のどれをも障害します。眼を動かす神経も障害します。筋肉が細くなったりもします。

感覚神経を調べるには、足の裏に温かいもの、先の尖ったもの、筆などを当てる検査があります。運動神経を調べるには、踵や肘を叩いてアキレス腱反射、膝蓋腱反射を見ます。大きな病院では神経伝達速度を測ったりすることも出来ます。自律神経を調べるには、心電図を用いて、深呼吸で心拍が調整されるのを見る検査があります。

足の裏に尖ったものを当てる検査では、9箇所中4箇所以上が低下していた場合、将来足にトラブル(潰瘍を作ったり感染を起こしたりする)を起こす可能性が高いそうです。こういう方は、フットケアが特に大切になります。また、自律神経が侵されている場合、正常な人が運動する時に上がるはずの心拍が、身体が反応せず上がらないので、運動をすると突然死しる可能性があるとのことで、運動は禁止となります。

糖尿病性多発神経炎の診断基準は、
糖尿病であること、他の末梢神経障害が否定出来ることの2項目が必須条件で、
自覚症状があること、両側のアキレス腱反射(膝立ちで)が低下もしくは消失していること、両側の内側くるぶしの振動覚が低下していること、の3項目中2項目を満たすこと。

鑑別が必要な疾患としては、手根管症候群(手の痺れ)、慢性炎症性脱髄性神経炎(筋力の低下や筋萎縮)、脊柱管狭窄症が挙げられていました。他には、アルコールの飲み過ぎ、甲状腺機能低下、薬剤性、自己免疫反応(膠原病やギランバレー症候群)、多発性骨髄腫などがあります。

糖尿病がある人の半分は神経障害を持ちます。しびれや痛みなど、分かりやすい症状がある人はまだ元に戻れる可能性がありますが、感覚の鈍さや麻痺となってくると、なかなか元には戻れません。早めの相談が大切です。

神経障害は、糖尿病と診断される前の、「耐糖能異常」という病態からも起こってきます。メタボリックシンドロームの人にも起こるとされます。しびれは糖尿病にかかっている期間が短くても起こってくるようです。

血糖コントロールを10年間厳しく行うと、普通にコントロールしていた人に比べて、手足のしびれや冷えなどを起こす確率は25%抑制されるそうです。10年の厳しい期間が終わった後も、心筋梗塞は15%、死亡は13%抑制されるそうです。

治療後にしびれや痛みなどが出ることがありますが、急なコントロールで起こります。しびれや痛みは、大体、1~数年で自然に戻りますが、感覚の低下は残ることもあるようです。

糖尿病のしびれにはいろんな薬が使われます。フェニトインや三環系抗うつ薬は2~3人に1人は効きます。カルバマゼピンやプレガバリン、トラマドールは3~4人に1人は効きます。よく使われるメキシチールは10人に1人ですが、しびれや痛みが出現してすぐには効くようです。

長い話になりましたが、講演会の話はまだまだ濃く長くでした。が、ここまで。糖尿病の患者さんの神経の訴えは進行するものです。若い人の、血糖をコントロールの目標を緩めないと同時に、生活にあまり支障がないしびれなどの訴えも、元に戻るうちに対処が必要と思いました。