2011年12月27日火曜日

変形性関節症の話

小さい講演会で変形性関節症の話がありました。

変形性関節症は、歳をとったり、運動や体重で関節に力がかかることで、関節の作りが壊れ、関節が痛くなったり、動かしにくくなる病気です。レントゲンでは、骨棘といって、骨の辺縁に棘が出来たり、関節の幅が狭くなったりします。

関節は、4型コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンで成り立っています。プロテオグリカンを作っているのがコンドロイチンやヒアルロン酸です。このプロテオグリカンが断片化したり、水分を含めなくなったりすることで、変形性関節症は始まります。

膝の変形性関節症は女性の方が多いと言われ、腰の変形性関節症は男性の方が多いと言われています。

国際的にはいろんなガイドラインがあるようですが、関節には血管が通っていないため、薬物を運ぶことも出来ず、根本的に治すには、人工関節を入れる手術しかないようです。手術の、費用に対する効果はバツグンで、一生内服を続けるより安いとされています。が、今後何年生きるかにも寄るでしょうから個人差があるでしょう。しかし、人工関節による運動の制限、使用期間とともに摩耗していくことは避けられないようです。今でもいろんな人工関節の種類が開発中のようです。

症状を緩和する方法はいろいろ勧められています。最も推奨されている治療は、姿勢などの教育、筋力トレーニング、体重を減らすことです。それから、痛み止め・・・COX-2阻害薬(セレコックス)やNSAIDs(ロキソニン)+プロトンポンプ阻害薬はどのガイドラインでも進められています。副作用を考えると、定期的に内服するなら、ロキソニンよりもCOX-2阻害薬の方が良く、その効果は胃カメラの所見で言うと2週間で差が出るようです。アセトアミノフェンは日本でも使える量が増え(1gまでOK)、湿布薬と共に、主な症状に対する治療になりうるようです。

ヒアルロン酸の関節注射のお薦め度は、人工関節やNSAIDsより劣り、重症度が弱から中の人に効果があると言われています。有名な論文では、偽薬(にせ薬)と同じくらい効果が「ある」、という結果があるようです。関節にヒアルロン酸を注射しても、注射がヒアルロン酸でなくても、痛みがとれ、しかもその効果は強い割合です。痛みがとれるなら、薬でも薬でなくても良いようですが、医療経済的に、と注射による合併症を考えると、残念ながらマイナスの要素が強いと思われます。グルコサミンやコンドロイチンの注射は、対症療法として使うならお勧め度は痛み止めの内服に比べると半分程度で、一部のガイドラインでは使わないことを推奨しています。

関節の研究は盛んに行われており、関節形成や破壊に関わるいろんな物質も見つかっていますが、関節に血流がないこともあり、副作用よりも大きい効果を得るには及ばないようです。

ヒアルロン酸注射が偽薬と同等に効果があるということに驚きました。偽薬も薬として使える日が・・・と思いましたが詐欺になってしまうでしょうか。外来でも出来る筋力トレーニングや姿勢、歩行などの教育方法を学ぶ必要があると思いました。

2011年12月20日火曜日

ワルファリンとダビガトラン

心臓が原因で起こる脳塞栓の予防治療は、血液が固まる機能を抑えることです。

血液の凝固機能を抑える薬には、ワルファリンが使われるのが一般的です。PT-INRという検査結果を指標に行います。70歳未満は2~3、70歳以上は1.6~2.6を目標にするというのがガイドラインですが、実際の現場ではPT-INR1.6では足りない印象があり、また、2.6では出血のリスクを考えて、PT-INR2.0弱を目標に細かく調整している様です。脳梗塞を起こした患者さんの平均PT-INRは1.2前後で、脳梗塞を起こした患者さんの8割以上の人が内服していない、もしくは内服していてもPT-INRが治療域に達していないようです。また、脳梗塞を起こしていない人でも、一般的には、3割くらいの人が治療域のINRからはみ出しているようです。

ワルファリンで凝固機能を抑えていると、脳梗塞を起こしても、起こした時の症状は飲まない場合より軽くてすむという結果があるようです。

ワルファリンの重要な副作用には、「出血」があります。消化管潰瘍からの出血、脳出血などです。

ワルファリンに抗血小板薬を追加すると、明らかに出血のリスクが上がることが分かっています。それでも併用を考える場合は、INRのコントロール良好でも脳梗塞が再発した場合、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞、一過性脳虚血発作の既往がある場合、虚血性心疾患を合併している場合、身体にステントが入っている場合です。

ワルファリンでPT-INRのコントロールが良い人は、出血が止まりにくくなっているので、大きな手術や外部から圧迫出来ない内視鏡の処置などがある場合は、3~5日前に中止し、ヘパリンでコントロールします(APTT1.5~2.5倍まで)。術後は、ヘパリンとワルファリンを同時に再開し、PT-INRが治療域に入るとヘパリンが中止されます。最近では、抜歯や白内障手術でも内服は辞めない方が良いと言われています。中止すると、5/500例は血栓塞栓症を起こすと報告されています。

ワルファリン内服者では、抗生剤で血中濃度が上がることがあり、注意が必要です。

ワルファリンを使ってはいけない人には、出血するような疾患を持つ人、肝障害を持つ人です。

凝固機能を抑える薬として、ダビガトラン(プラザキサ)も最近選択肢の一つとして上がっています。講演会の話をふまえつつ、比較してみました。

ダビガトラン
75mg132.6円×2=265.2円/日×30日=7956/月 3割負担で2386円/月
110mg232.7円×2=465.4円/日×30日=13962/月 3割負担で4188円/月
ワーファリン
1mg9.6円 1日5mg飲むとしても48円/日×30日=1400円/月 420円/月
一桁違うのは辛いですね。

タビガトランのメリット
ワルファリンより脳血栓塞栓症の予防により優れている
頭蓋内出血が少ない
消失が早い(12時間)緊急時にはすぐ辞めれる
効果発現が早い(2時間)

デメリット
消化器症状が多い、しかしPPIは吸収が低下するので併用出来ない。H2 拮抗薬を使う。
消失が早い→1日2回→飲み忘れに注意
指標が要らない、採血要らない、痛くない、その分安くなる(?)
ワソランと併用出来ない
腎機能注意!!
消化器からの出血に注意。
一包化出来ない。湿気を吸うから。
1日2回のむ必要がある。
まだ14日しか処方出来ない。

頭蓋内出血は、アスピリン、クロピドグレル、ワーファリン、ベラパミル、アミオダロン、NSAIDsとの併用でリスクが上がる。また、血圧のコントロールが大切になってくる。

健康と、お金は比べられないと考えると、ダビガトランがおすすめです。しかし、ワルファリンから乗り換えるには、PT-INRの測定など、少々手間が追加されるようです。患者さんのライフスタイルに合った、薬の選択が必要そうです。

2011年12月13日火曜日

心臓が原因で起こる脳卒中

こちらも、講演会で聞いてきた話、+パンフレットをまとめました。

脳卒中には、脳梗塞(脳の動脈が詰まって血が途絶え脳細胞が死ぬ)、脳出血(脳の血管がもろくなり破れて出血する)、クモ膜下出血(脳動脈瘤や脳の動脈静脈の奇形が破裂してくも膜と脳の間に出血する)があります。

脳梗塞には、ラクナ梗塞(脳の細い動脈が詰まる)、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化により比較的太い動脈が詰まったり狭くなったりする)、心原性脳塞栓症(心臓の中に出来た血栓が流れてきて脳の動脈を閉塞させる)があります。他に少ない割合で、動脈解離、もやもや病、血管炎、髄膜炎、経口避妊薬、凝固異常症などがあります。

心原性脳梗塞は脳梗塞の27%で、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞とほぼ同等の割合を占めますが、他の脳梗塞より死亡や寝たきりなど重度障害となる割合が高いため、予防が重視されています。

心疾患による心原性脳梗塞では、抗凝固療法を行うための診断が重要となります。脳梗塞種類で、再発予防は異なります。ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞では血小板の機能を抑える薬を使います。心原性脳塞栓症では、凝固機能を抑える薬を使います。

心原性脳塞栓症を起こす心疾患では、心房細動が最も多いです。心房細動をもつ患者さんには、高血圧症、冠動脈疾患、心不全、慢性呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症、弁膜症があります。心房細動が見つかったら、まずは基礎疾患を確認し、あれば治療する必要があります。

心房細動には、発作性心房細動(発症7日内で自然に停止する)、持続性心房細動(発症7日以上持続し除細動が可能)、永続性心房細動(除細動が不可能)があります。いずれの心房細動も、脳梗塞を起こす危険度は変わらず高いです。除細動というのは、薬や電気ショックで正常な心臓のリズムに戻すことです。

若い人で、脳梗塞を起こすリスクがなく、心機能に問題なく、心拍数が正常範囲であれば、薬を飲まずに経過を見ることができます。しかし、1年に1回はそれらの条件を変わらず満たしているか病院で確認する必要があります。

自覚症状がある、心不全を起こしそうもしくは起こしている場合には、除細動を行ったり、薬で脈拍数を減らしたりします。脈が少ない心房細動で、失神などの症状があるときは、ペースメーカーを植えこむ必要があります。

一番の問題は、心不全を起こさないための治療に加え、脳梗塞を予防することです。心臓のリズムや脈拍数をコントロール出来ていても、この治療は必要です。心不全(1点)、高血圧(1点)、年齢75歳以上(1点)、糖尿病(1点)、脳梗塞や一過性脳虚血発作(2点)のいずれかがある人、特に2点以上の人は、凝固機能を抑える治療を考える必要があります。

1年間に脳梗塞を起こす確率は、0点で1.9%、1点で2.8%、2点で4.0%、4点で8.5%、6点で18%と高くなります。起こした時の重症度は点数とは関係ないそうです。

凝固機能を抑える薬は、現在ワルファリン(ワーファリン)が主流ですが、ダビガトラン(プラザキサ)も最近選択肢の一つとして上がっています。凝固機能を抑える薬は、メリット、デメリットのバランスが難しいですが、やはり、脳卒中の予防として必要なお薬です。

ちなみに、昨日の医局会では、ワーファリンの内服量が変わらず、安定している人のINR確認の採血は、3ヶ月に1回も1ヶ月に1回も変わらないと思われる論文が紹介されました。2年間の短期間試験ですが、血液検査も少しですが侵襲ある検査ですから、必要以上の検査はしないよう心がけます。

2011年12月6日火曜日

ステロイドで起こる糖尿病の話

佐賀学会の続きです。

ステロイドは糖尿病を起こします。ステロイドの糖尿病には、インスリンが効きにくい体質があること、食後に高血糖を起こすことが多い、血糖は昼以降上がってくる、尿に糖が出やすいという特徴があります。なので、ステロイドの糖尿病に早く気づくためには、血糖測定は空腹時ではなく、適当な時間、特に午後の測定が良いようです。また、尿に糖が出ているのに血糖の数値が正常という場合も、測定のタイミングを変えて測定するなど、注意が必要です。

ステロイドによる糖尿病は、投与量より投与日数が大切です。3ヶ月で3人に2人は糖尿病を起こし、1年間でほとんどの人が糖尿病になると話されていました。が、投与量も投与日数ほどではないけど関係はしている様です。また、沢山の病院を受診されている方で糖尿病が急に悪化した方は、整形外科で関節にステロイドを注入していたりすることがあるので、私たちは病歴をきちんととる必要がありますし、患者さんも自分が受けている治療について知っておく必要があります。

ステロイドで糖尿病になっても、膵臓から出るインスリンの量が保たれていれば、内服の減量と共に元に戻れます。しかし、ステロイドの内服が長期必要となってくると、なかなか難しいというのが現状のようです。ステロイド20mgまでの内服は、経口の糖尿病薬(アクトス、メルビン、インクレチン製剤)でコントロール出来るようですが、それより増えるとインスリンの自己注射を使うことが多いようです。血糖は昼食後に上がってくることを念頭に置き、午後のインスリン量を増やします。ステロイドを減らした時は、インスリンが聞き過ぎて低血糖に注意し、同時にインスリン量も減らす必要があります。

注射のステロイドの方が副作用が少ないという報告があり、内服の方が簡便ではありますが、ステロイドの長期投与が必要な人は、注射の期間を延ばしても良いのではないか、という提言もありました。

入院中と家での療養の感染の危険はどちらが高いか、という質問がありましたが、これは未解決のようです。

私の内服量では、感染の危険が上がることはなさそうですが、骨折と糖尿病の危険はやや高めと思われます。B型肝炎ウイルスは測定済みですので大丈夫。骨密度の定期的な測定と食後の血糖は気をつけてみておこうと思いました。

それから、ステロイドの副作用の話がメインになってしまいましたが、ステロイドが、多くの病気に有効で、変わらず貴重な薬であることは確かです。下手に焦らず、お医者さんと相談して薬の量を調整したり、副作用を予防したりすることが大切です。急な中止は厳禁です!

2011年11月29日火曜日

ステロイドが起こす感染症と骨粗鬆症について

佐賀で内科学会がありました。
ステロイドの話を聞いて来ました。

ステロイドは、注射、飲む薬、吸入薬など、いろんな薬に入っています。気管支喘息、膠原病、抗腫瘍薬などで使われます。塗り薬では湿疹の痒みを止めたりします。しかし副作用も多く、使い方には注意が必要です。

ステロイドは感染症を起こしやすくします。20mgで内服しない人の1.3倍、20~40mgで約2倍、感染症を起こしやすくなります。なので、ステロイドの量が多い人、長く飲む人は感染症を予防する薬も飲む必要があります。

感染症の話では、ステロイドによるB型肝炎ウイルスの再活性化が最近言われています。昔B型肝炎の検査で治療が必要ない、もしくは治療で治ったと言われていた人も、ステロイドや抗腫瘍薬で自分の免疫が弱った時に、ウイルスの量が増えて来て、肝炎を起こすものです。ウイルスがいると言われたことがある人は、再度、検査が必要です。将来、病気をしても、充分な治療が受けるようにしておくためには、治療が必要なこともあります。ほとんどの場合、HBs抗原陽性の人はウイルス量を測定し、検出される場合は、核酸アナログ製剤を検討するようです。

ステロイドは骨折を起こしやすくします。1日2.5mg以上で背骨の骨折の危険度が上がり、1日7.5mg以上ではその危険はステロイドを飲まない人の5倍になります。骨密度を上げる薬を飲んでも、ステロイドを飲まない人と同じにはなりませんが、それでも、骨折の危険度はかなり抑制されるとのことです。また、どうしても必要な人には若い方でもビスホスホネートの内服をするようですが、妊娠3ヶ月前~妊娠中(初期?)に内服をしても、報告数は少ないですが、今のところ赤ちゃんの奇形などのリスクはビスホスホネートを飲まない人と同等のようです。

2011年11月22日火曜日

糖尿病で起こる神経の病気

糖尿病で起こる神経の病気について講演を聞いてきました。

糖尿病は神経を障害します。感じる神経(感覚神経)、身体を動かす神経(運動神経)、意識しないで身体のバランス(発汗、腸の動き、血圧など)を整える神経(自律神経)のどれをも障害します。眼を動かす神経も障害します。筋肉が細くなったりもします。

感覚神経を調べるには、足の裏に温かいもの、先の尖ったもの、筆などを当てる検査があります。運動神経を調べるには、踵や肘を叩いてアキレス腱反射、膝蓋腱反射を見ます。大きな病院では神経伝達速度を測ったりすることも出来ます。自律神経を調べるには、心電図を用いて、深呼吸で心拍が調整されるのを見る検査があります。

足の裏に尖ったものを当てる検査では、9箇所中4箇所以上が低下していた場合、将来足にトラブル(潰瘍を作ったり感染を起こしたりする)を起こす可能性が高いそうです。こういう方は、フットケアが特に大切になります。また、自律神経が侵されている場合、正常な人が運動する時に上がるはずの心拍が、身体が反応せず上がらないので、運動をすると突然死しる可能性があるとのことで、運動は禁止となります。

糖尿病性多発神経炎の診断基準は、
糖尿病であること、他の末梢神経障害が否定出来ることの2項目が必須条件で、
自覚症状があること、両側のアキレス腱反射(膝立ちで)が低下もしくは消失していること、両側の内側くるぶしの振動覚が低下していること、の3項目中2項目を満たすこと。

鑑別が必要な疾患としては、手根管症候群(手の痺れ)、慢性炎症性脱髄性神経炎(筋力の低下や筋萎縮)、脊柱管狭窄症が挙げられていました。他には、アルコールの飲み過ぎ、甲状腺機能低下、薬剤性、自己免疫反応(膠原病やギランバレー症候群)、多発性骨髄腫などがあります。

糖尿病がある人の半分は神経障害を持ちます。しびれや痛みなど、分かりやすい症状がある人はまだ元に戻れる可能性がありますが、感覚の鈍さや麻痺となってくると、なかなか元には戻れません。早めの相談が大切です。

神経障害は、糖尿病と診断される前の、「耐糖能異常」という病態からも起こってきます。メタボリックシンドロームの人にも起こるとされます。しびれは糖尿病にかかっている期間が短くても起こってくるようです。

血糖コントロールを10年間厳しく行うと、普通にコントロールしていた人に比べて、手足のしびれや冷えなどを起こす確率は25%抑制されるそうです。10年の厳しい期間が終わった後も、心筋梗塞は15%、死亡は13%抑制されるそうです。

治療後にしびれや痛みなどが出ることがありますが、急なコントロールで起こります。しびれや痛みは、大体、1~数年で自然に戻りますが、感覚の低下は残ることもあるようです。

糖尿病のしびれにはいろんな薬が使われます。フェニトインや三環系抗うつ薬は2~3人に1人は効きます。カルバマゼピンやプレガバリン、トラマドールは3~4人に1人は効きます。よく使われるメキシチールは10人に1人ですが、しびれや痛みが出現してすぐには効くようです。

長い話になりましたが、講演会の話はまだまだ濃く長くでした。が、ここまで。糖尿病の患者さんの神経の訴えは進行するものです。若い人の、血糖をコントロールの目標を緩めないと同時に、生活にあまり支障がないしびれなどの訴えも、元に戻るうちに対処が必要と思いました。

2011年11月15日火曜日

日本人はLDLコレステロールの高い方が長生きする?←しない。

だいぶ先日の話ですが、ある女性患者さんが、「LDLコレステロールが高いほうが長生きするって話もあるんでしょ?これから一生コレステロール薬を飲むのは嫌だ、辞めたい」と仰ってました。確か、1剤内服しているがガイドラインの目安の値を達成していない方で、量を増やすか種類を変えようかと思っていたところでした。

「LDLコレステロールが高い方が良い」説は噂に聞いてはいましたが、自分で読んだことはなく、巷では下げたほうが良い情報ばかり入って来るし、ガイドラインもそうなっているので、てっきり消えたものと思っており、鵜呑みにして薬を出す方向でいましたが、良いきっかけだったので、巷では解決したことカモしれませんが、この説について考えてみました。

「日本人はLDLコレステロールの高いほうが長生きする」は、2009年日本脂質栄養学会から出た論文です。女性のコレステロール上昇に対する死亡率増加は小さいこと、男性のLDLコレステロールの増加が死亡率を増やすというのが、有意に、言えるのは、190mg/dl以上であることから、女性のコレステロールを下げる治療は不要、男性はLDLコレステロール190mg/dlまで不要という話です。

これに関して、2010年に日本動脈硬化学会から声明が出ています。上記説の根拠となる論文は、発表に際しての専門分野の複数の研究者による検証(査読)を受けていないこと、結果が死亡率とアバウトで栄養状態や併せ持つ疾患、隠れてある疾患を考慮していないこと、高コレステロールと動脈硬化性疾患の関係は科学的根拠が多数示されていること、LDL低下薬(スタチン)で血清コレステロール値を下げても総死亡が増加することはなく、むしろ統計学的に有意に減少することが証明されていることが主張されてありました。

日本動脈硬化学会の声明文は非常に納得の行くものであり、やっぱり巷では解決している問題に違いない、と思いました。LDLコレステロールは高いほうが良いから治療したくないという患者さんには、元々死亡率の高い疾患でコレステロールが低くなっていること、LDLコレステロールを下げる治療をしても死亡率が上がることはなくむしろ有意に下がると証明されていることを説明し、ガイドラインに沿った治療を進めようと思います。

また、研究においても、観察だけの研究と介入する研究とは別に考えないと解釈を間違える可能性があり、解析する際も、解析された結果を読む際も気を付けないといけないと思いました。

2011年10月4日火曜日

お腹のレントゲン写真でわかること。

「先日の学会で、お腹のレントゲン撮影で分かること」というセミナーがありました。

CTは買うにも借りるにも値段も高く、撮った写真を読むのもレントゲンより難しく、多くの診療所では置いていないことが多いです。ウチも然りです。CTのある病院ではCTに頼ってしまいがちですが、検査費用や被曝の問題から、レントゲン撮影を先に行ってCTの必要不必要の判断をしなければなりません。今回のセミナーでは、お腹のレントゲン写真からでも、多くの情報が得られることが分かり、レントゲン撮影も侮れないと思われました。

お腹のレントゲン撮影では、ガスの分布、軟部組織や腫瘍の影、お腹の中に溜まった水や血液が分かります。横になって撮ったり、立って撮ったりすることにも意味があります。お腹の中で写った影が、固定されているものか、されていないものかが分かります。例えば、胆嚢の石や膀胱の石は、影が移動します。

セミナーの中では、腸炎、絞扼性イレウス、回盲部捻転、胆石イレウス、腸石イレウス、腸管穿孔、上腸間膜動脈閉塞、腸重積、膵頭部腫瘍、体網捻転、卵巣出血、ダグラス窩膿瘍、子宮筋腫、腎結石、肛門異物など、様々な疾患が登場しました。イレウスというのは、何らかの理由で腸が働かなくなり、便やガスが出なくなることです。捻転というのは、捻れてしまって、腸が狭くなり便が通らなくなったり、腸を栄養する血管がくびれて腸がダメになったりすることです。

ちなみに、場所が間違えやすい胆石と右腎結石では、胆石は綺麗なコロコロで、腎結石はゴツゴツしていることが多いというちょっとした読むコツとかもあります。

患者さんが困った時、大きな病院に行く前に、小さな病院を通過することは、意味あることなんだなぁと思った次第でした。たとえCT検査が出来なくても。また、挙げた病気は、時間との戦いの病気も多く、そんな患者さんと出会った時に見逃すまいと思いました。

2011年9月27日火曜日

2型糖尿病患者さんが定期的に通院すると・・・

9月にポルトガルで行われた、欧州糖尿病学会で、糖尿病患者さんが定期的に通院してプライマリケア医にかかると、心臓血管系の病気(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞)にかかる確率と、それで死亡する確率が下がる可能性があることが発表されたそうです。

発表では、心蔵血管系の病気を持っていない2型糖尿病患者さん約3000人を4年間追跡したそうです。その中で、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を起こした人は48人、頭の血管が細くなることが原因の脳卒中が起こった人は34人、手足の細い動脈が細くなって痺れたり歩きにくくなったりする病気は8人、心筋梗塞などで死亡した人は5人だったそうです。1000人の患者さんが1年間で何人病気を発症するかに計算し直すと、心筋梗塞や狭心症などは4人、頭の血管の病気は3人、手足の細い動脈の病気は1人、心筋梗塞などで死亡する人が0.5人です。

普通の糖尿病患者さんでは、報告されている論文にも寄りますが、1,000人患者さんがいれば、1年間に、心筋梗塞や狭心症は10~30人、頭の血管の病気は6~11人、手足の動脈の病気は2~4人、亡くなる人は2~8人います。明らかに、きちんと通院している患者さんを追跡した方が、確率が低くなっています!!

この前参加した講演会では、糖尿病患者さんの寿命(マイナス10年)が、なかなか普通の人に近づかないと聞いており、少し残念に思っていましたが、通院すれば、ちゃんとこれから病気が起こる確率を減らしているということですね。努力は無駄じゃないということです!

糖尿病は、不規則な仕事やストレスのある生活がすぐ影響しますし、コントロールするのが難しい病気だと思います。遺伝や体質の影響もあり、必ずしも生活習慣だけが問題ではないこともあります。薬の副作用や、インスリン注射は、抵抗があったり、痛かったりで大変だとは思いますが、糖尿病患者さん、一緒に頑張りましょう!

プライマリケア医では、血糖だけでなく、血圧、コレステロール、体重など、病気を発症する確率を上げる原因についても包括的に診ます。プライマリケア医としても頑張りたいところです。

また、病気を起こる確率を見てみると、ぽっくり死亡の可能性より、断然、病気を持ちつつも仕事する、生活する可能性が高いです。当たり前と言えば、当たり前ですが、ぜひ、放置されず、諦めず、お医者さんにかかることをお勧めします☆

2011年9月20日火曜日

合格!

日本内科学会認定内科医に合格しました。
晴れて認定内科医となりました。
ご協力頂いた先生方、ありがとうございました。

2011年9月1日木曜日

こつこつ研究会に行ってきました。

骨粗しょう症の研究会があるというので、身長短縮と胃食道逆流について研究している兄Drに便乗して行って来たら、VIPな先生の集まりの小さな研究会で、場違いな感じになってしまいびっくりしました。が、勉強になりました。

骨粗しょう症は、骨密度が低下している状態、もしくは、骨が弱って骨折した状態です。骨は、骨を構成するカルシウムやミネラルが詰まっていますが、「骨密度が低下する」とは、そういう構造が少なくなってスカスカの状態です。

腰の曲がり方には、
● 円背  猫背。胸の骨が主に曲がっている。
● 凹円背 猫背+腰が前に出る。
● 全後湾 全体的(腰から胸にかけて)曲がっている。
● 亀背  腰が曲がっている。
という分類があるそうです。最も具合が悪く、生活の質が下がるのは、全後湾です。亀背は、最も痛いそうです。

在宅の高齢者の2~3割は必ず転倒するそうです。
 →転倒した高齢者の1割は、必ず骨折をするそうです。
  →その一部が寝たきりになってしまうのですが、その7割は太腿の骨折です。

転倒するだろうと予測される因子
● 過去に転倒をしたことがある人は、他の人の5倍、転倒する可能性がある。 
● 円背の人は、他の人の3倍、転倒する可能性がある。
● 歩く速度が速い人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。
● 杖を使う人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。
● 5つ以上の薬を飲んでいる人は、他の人の2倍、転倒する可能性がある。


腰の骨を折るだろうと予測される因子
● 既に骨折している椎体の数
● 腰の骨の骨密度

骨粗しょう症を疑う因子(今回の講演会では出ませんでした)
● 年をとる
● 早くに閉経した
● BMI20未満(BMI=体重kg÷身長m÷身長m)
● 骨折、骨粗しょう症の家族がいる
● カルシウムが足らない
● 喫煙
● お酒の飲みすぎ
● コーヒーの飲みすぎ
● 運動不足
● 日に当たらない

腰の骨の骨折は、胸の骨の骨折より重要です。
 椎体の容量は、胸→腰に行くほど大きくなるからです。
 骨折した後、起き上がれるようになるまでの日数は、
  ① 腰 が最も時間がかかり、胸の骨折より時間がかかります。
  ② 太腿の骨の胴体に近い部位の骨折 がその次に時間がかかります。
  ③ 胸 
  ④ 手関節

腰の骨の骨折した個数よりも、腰の骨がどの範囲まで動くか(可動性、柔軟性)が生活に影響する。
骨の可動域の影響は、年齢、骨密度、後湾の角度、握力、胸椎の骨折は関係ないようです。
背筋力が上がると、生活の質は上がるそうです。

腰の骨の骨折の後には、体重や重力、負担をかけない、非加重安静が大事だそうです。非加重安静をしないと、骨の治癒・癒合が途中で止まり、治らないことになります(偽関節)。必ずしも、安静にしなければならないこともないようですが、ステロイドを飲んでいるなど、危険が高い人は、安静にしていた方が賢明の様です。

腰が曲がる理由には、腰の骨の骨折以外にも、加重で潰れたり変性したりするようなこともあるみたいです。

椎体の骨折は、背筋運動で予防出来るそうです。
2年間の背筋運動を、1日10回、1回5秒する実験では、
4人に1人は脱落しますが、生活の質を改善し、痛みを改善したそうです。
背筋運動とは、お腹に枕を当てて背を伸ばし、頭・背中・おしりをまっすぐに維持するという運動です。
既に背が曲がっている人は難しいので、しっかりした椅子(倒れない)に深く腰をかけ、頭の後ろに手を組んで、背もたれに寄りかかりながら背を伸ばす運動や、壁に向かって立ち、両腕を持ち上げて両手を壁に充てて背を伸ばす運動などでも良いようです。
背筋運動は、腰の可動域は増やしませんが、生活の質は改善します。痛みにも効果があるようです。

骨粗しょう症は、骨折でもしないとなかなか調べない検査ですが、大事な病気なので、腰の曲がった人を見つけたら、検査をしようと思いました。また、腰の曲がってイタイイタイ、という人を見つけたら、背筋運動を教えようと思いました。

腰の骨の問題なので、専門は整形外科ですが、当院でも骨粗しょう症の検査やお薬の処方は出来ます。ご相談下さい☆

2011年8月16日火曜日

内科医が知っておきたい口腔疾患

5月18日の総合ケースカンファを覚書。

喉の奥の苦味は、目薬が原因となることがある。
70歳以上の35%は、薬剤性である。
古い義歯は、素材が変化を起こして、苦味の原因となることがある。

多発する咽頭潰瘍→クローン病
歯肉腫脹→探求性白血病
分厚い舌→アミロイドーシス、多発性骨髄腫
咽頭膿瘍+リンパ節腫大→伝染性単核球症
 伝染性単核球症ではEBウイルスの検索と共にサイトメガロウイルスの検索も行う。
 ペニシリン、セフェム系抗菌薬は禁止。発疹した場合も、将来ペニシリンの使用は多分大丈夫・・・。
 両側に偽膜が付着する。
 分葉球、桿状球の上昇はほとんどない。
 AST、ALTが上昇する。サイトメガロの方が肝障害はひどく、口腔症状は乏しい。
 リンパ腫のことも稀にあるので鑑別は必要。
扁平苔癬様の白苔→カンジダ
 カンジダを診た時はHIVも検索する。
潰瘍を伴う白苔→ヘルペス
口角炎、舌炎、口唇炎→鉄欠乏性貧血
 Runner's Anemia・・・汗の中にも鉄分が溶けるので大量の汗でも貧血になる。
シグマートで口腔内潰瘍が出来る。
 中止後3週間くらいで治る。
フェニトインで歯肉増殖が起こる。
 困っている場合は外科的アプローチも行う。
外歯瘻は時々ある疾患。
歯肉着色では、悪性黒色腫の鑑別が必要。
口腔内の悪性疾患では、扁平上皮癌がある。
ビスホスホネート内服している人は顎骨壊死に気をつける。

「味覚異常」
亜鉛は欠乏していなくても処方することがある。効果がある印象がある。
唾液分泌の低下に対してはサリグレンで対症療法。老人性、シェーグレン症候群が考えられる。
歯磨き粉を変えることで改善することがある。

味覚異常に効く漢方薬
①白虎加人参湯
②麦門冬湯
③五苓散     で自覚症状の改善があったとのこと。

味覚異常の鑑別で大事なのは聴神経腫瘍。
 聴神経のすぐそばに顔面神経が走っているので、顔面神経が障害されると舌舌半分の味覚異常が起こる。
 初発症状で多いのは、難聴、耳鳴り、めまい・ふらつき。

口腔ケアは発熱、肺炎の予防になり、大切である。

2011年7月13日水曜日

認定内科医資格認定試験を受けてきました。

先日、認定内科医資格認定試験を横浜で受けて来ました。
皆さん、ジーパン、サンダルありの、それぞれ思い思いの格好で来てありました。むしろスーツは見かけず、ジャケットすらかなりの少数派。クーラー対策に上着を持って行きましたが、節電モードのためか少し暑いくらい。移動が暑かったので汗が引くと、丁度良い室温でした。
内容は基本的。血液の治療や腎臓の生検となると一般内科の臨床から離れる感じがありますが、イヤーノートが活躍しました。国家試験時より、臨床を経験している分、内容が頭に入ります。良い勉強になったので、試験もたまには良いですね。資格が何につながるか今市よく分かっていませんが、勉強にはなりました。
手応えは、試験前確率より上がって五分五分。臨床をバリバリしながら合格されている方が多数ですので、すごいと思います。合格すればご報告申し上げます。受けた方はお疲れ様でした。

2011年4月20日水曜日

ペルテス病~朝Web講義

医大総合の朝講義に参加してきました。
ネット接続の不具合で途中参加になりましたが、今日のお題はおそらくペルテス病。

ペルテス病は、5~10歳の子供に多い、股関節の病気。
発熱があって、股関節を動かせる範囲に制限が出来たり、CRPが異常に高かったりしたら、整形外科へ紹介すること。ペルテス病や化膿性股関節炎の可能性あり。
治療は安静とNSAIDs。小さい子にはイブプロフェンを使うことが多い。
診断はXpでは厳しい。MRIまで。
寝かせて股関節90度、膝90度曲げて、臍側に内転させると痛がる。

関節炎で頻度が高いのは単純性股関節炎で、これは自然経過で治る。
関節痛がなくなってもペルテス病に移行することがあるので2,3ヶ月後にXpでフォローを。
他に、化膿性関節炎、リウマチ熱(溶連菌感染後の関節炎)、若年性関節リウマチがある。
リウマチ熱は心臓にも来るので要チェック。
関節液貯留はエコーで見えることがある。
膝を痛がることがある。
子供はおむつを替えるときに泣く。

子供を見る機会はまだ少ないけど、勉強になりました。

2011年4月8日金曜日

新築の診療所に移転しました!

旧医院の同じ敷地内に、新築、移転いたしました。
ハプニング続きで大変でしたが、何とか。
4月8日より、新医院で診療を開始しています。
住所、医院名などに変更はありません。

先週は、業者さんの出入り、患者さんの出入り、検診さんの出入りで
今週は、だいぶ落ち着いて来ました。
後は、まだ、ちょこちょこ気になる所を手直ししていいる最中です。

旧医院を取り壊すまで後一か月ほど、
迂回して新医院に入っていただきます。
雨の日には、足元が悪いかと思いますが、どうぞ気をつけてお越し下さい。

看護師さんを含め、お引越しをしていただいた方々には感謝です。
お祝いなどもありがとうございました。華やかになりました。

今後とも、当医院をどうぞよろしくお願いいたします。

2011年3月15日火曜日

AEDの値段がだいたい分かった。

AEDは韓国製が安くて25万くらい。
本体の保証期限は5年。
充電バッテリーの保証は2年で、充電方式。3か月おきの確認が必要。
使い捨てバッテリーが別売りで52,000円。保証期間やチェックの必要性は不明。
成人用パッドは12,000千円。保証は1年半。
小児用パッドは20,000。保証は2年半。

日本製は32万。
本体の保証期限は5年。耐用期間は6年。 
バッテリー寿命は3年。電気ショック30回。買い替えるなら4万円。
成人パッドは12,000円。使用期限は概ね1年半。
小児パッドは別売で22,000円。使用期限は2年3か月。

外国製で高いのは35万。
使用期限は本体5年。耐用7年。
バッテリーは寿命4年。電気ショック300回。買い替えに6万3千円。
成人パッドは1万2千円。使用期限2年。
小児用パッドは別売りで1万9千円。使用期限2年。
ただ、アメリカでのAEDの21%はリコール製品らしい。

保証期限とはどういくことだ?修理にお金がかかるというだけで、期限が切れても使い続けて良いのだろうか。
10年間本体を買い替えずに使い続けるとすると、
韓国製は250,000+12,000×6=322,000円。バッテリーは値段不明。チェックしながら使い続けるのか?
日本製は320,000+40,000×3+12,000×6=512,000円。
外国製は350,000+63,000×3+12,000×4=587,000円。

分からないことがあり過ぎる。業者に聞くのが一番だけど、購入を決めないうちに聞きにくい。

月々6300円で5年契約のレンタルAEDを発見。6,300×12×10=756,000円・・・。
メンテナンスは面倒だけど欲しいなら買うな。

BLS講習会:一人CPR

心肺蘇生の講習会に行ってきました。
AHAガイドライン2010を習ってきました。
BLS(Basic Life Support)とは、心肺停止状態の人に対して行う救命処置です。医療に従事しない一般人も行えます。講習会にも、救命士さん、看護師さんなど、いろんな人が来ていました。

● 一人心肺蘇生の方法
倒れた人、倒れる人を見かけたら、
1.反応をチェック
 「大丈夫ですか!?」
 半身麻痺もありえるので、両肩を触る。
2.呼吸をチェック
 2005年と変わったところは、何秒以内、以上という規定がなく、瞬時に行うということ。
3.救急対応システムに通報し、AEDを依頼する。
 「誰か来てください。119番通報とAEDをお願いします。」
4.頸動脈で脈拍をチェック
 10秒以内。
5.心臓マッサージを30回。
 「1,2,3,4・・・30」
 乳頭と乳頭の中心に、両手を重ねて置き、指は軽く組み、1分間に100回以上。
 深さは5cm以上。(これも2005の4cmから変更)
6.頚椎損傷の心配がなければ、頭部後屈で人工呼吸を2回。
 1秒1呼吸。胸郭が膨らむのを確認する。
7.心臓マッサージ→人工呼吸を繰り返す。

AED(Automated External Defibrillator)は、日本語で自動体外式除細動器です。心臓が止まった人に電気ショックを与えて心臓を動かす道具です。電源入れて、パッドを付けて、コードをつないで、心マを止めて解析を待ち、必要があれば、全員離れてショックボタンを押す。CPR再開。最近はちょこちょこ見かけます。正直言うと、残念ながら当院にはありません。予算とメンテナンスの問題みたいです。欲しいです。佐賀県のAED設置施設が紹介してあるサイトを発見。
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/ki-kyukyu/aedsetti/aed-sisetu.html
一番近いAEDははがくれ荘や佐賀共栄銀行になるでしょうか。救急車とどちらが早いか。AEDの値段は結局分かりませんでした。英語のだったら11万くらいであると聞いたような。でもどうせ買うなら誰でも扱えるモノが良いと思うし、有効期限や点検も必要と考えるともっとかかるだろう。電極パッドは製造から1年半から2年、バッテリーは製造から2年から5年が使用期限のものが多いらしい。そうするとリースが良いのか。値段が分からないので検討しようがない。ポケットマスクは私が買ったのを常備しときます。

心臓マッサージはだいたい2分間で人工呼吸係と交代するのですが、結構きつかったです。背筋は1,2日、腹筋は3,4日くらい痛かったです。日頃の運動不足は承知しておりますが…。ACLSに向けて腹筋し始めました。

2011年3月8日火曜日

虚血性心疾患と最新治療

先日の講演会の後半編。

心疾患での死亡は日本で第3位。

虚血性心疾患は、心臓に血が行かなくなる病気です。心筋梗塞や狭心症を指します。心臓を栄養する血管、冠動脈が詰まったり、細くなったりすることで、そこから先の心臓を動かす筋肉(心筋)が死んでしまったり、正常に動けなくなったりします。

虚血性心疾患の治療に、心臓を栄養する血管にステントという筒を広げて治療する方法がありますが、最近は薬剤溶性ステントというのが流行っているらしいです。ところが、長期予後には、薬剤溶性のものも、そうでないステントも変わらないらしい。でも、再狭窄は薬剤溶性のものの方が少ないと。ということは、再狭窄の治療が少ない薬剤溶性の方がやっぱり良いのかな。

ステントには、単純な筒状のものもありますが、複雑に枝分かれしたりするものもあります。もちろん、複雑に枝分かれしたものが後から開発されたものですが、複雑なステントの方がステント血栓症は少ないらしい。ステント血栓症は、心臓を栄養する血管にステントを置いてきたときにおこる合併症。異物が体の中に入るので、ステントの存在自体や、血管の内側のコーティングをステントを置くときに傷つけることによって、体の血を固めるシステムを動かして、血の塊を作るのではなかったかしら。

ステントは、60秒間ゆっくり膨らますのと、20秒間3回膨らますのとでは、20秒3回の方が再狭窄率は低いらしい。

専門家からの視点としては、ステントの症例はやっぱり増えているとのこと。外科に相談する症例としては、再狭窄例、特に左主幹部の。と、左主幹部+びまん性の狭窄例らしい。

と、面白かったのでついつい書いてしまいましたが、専門的な話は置いといて。。。

最近流行りの?心臓CTについて。
心臓カテーテル検査という負担の大きい検査をしなくても、心臓血管の狭くなっている状態が分かるということで、心臓CTが検査の選択肢にあがってきています。負担が少ない点は大きなメリットですが、造影剤を使用する量、X線に被曝する量は、カテーテル検査の12倍らしいです。でもやっぱり造影剤アレルギーでもない限り、CTを選びたい気はしますね。

総合と関係ある話としては、
糖尿病の治療がここ10年ですごく発達してきましたが、平均寿命が普通の人より10~13歳短いという結果は、短縮されていないそうです。残念。コントロールが甘いのかな。血糖を下げるだけじゃダメ?まだまだ、ということですね。

血圧を1mmHg下げると、心血管のイベントは4%下がるらしい。これは大きい。1mmHgでも下がるよう努力すべし。

ミカルディスは糖尿病の新規発症を抑えるとのこと。これはちょっと共催者の息がかかってそうだけど嘘じゃないでしょう。リスク高い人には使ってみるか。処方時にそこまで頭が回れば。

何とあれ、虚血性心疾患の治療には生活習慣の管理が大事!!とのこと。わかっちゃいるけど難しい。努力、応援すべし。

報告終わり。次は土曜日に行ったBLS講習について。カナ。腹筋の筋肉痛が今朝やっと治っていた。。。

2011年3月1日火曜日

酸化ストレスと心疾患

先日、循環器の講演会に行ってきました。

酸化ストレスと心疾患について。

酸化ストレスは、老化や全ての疾患の根本となるもので、体に悪いもの、というイメージで聞いていましたが、折角なのでグーグル先生に聞いてみました。酸化ストレスは、体の中で組織を傷つける力と、それを修復する力の差を指すようです。身体の中で細胞がエネルギーを作った老廃物や、外から入ってきたものからの攻撃(ばい菌とか?)、要らない細胞の処理、細胞同士の情報伝達で出来た老廃物などが傷つけます。身体を構成している脂質、蛋白質、酵素、DNAなどが酸化されて傷つけられます。引いては、老化が早まったり、病気を起こしたり、癌や生活習慣病(糖尿病、高血圧など)を起こしたりします。アンチエイジングで良く聞く言葉ですね。生きている限りは誰でも酸化ストレスがかかっています。

難しいミクロな話はあまり頭に浸透していませんが、「高容量のカテキン(緑茶の成分)は酸化ストレスを抑える」らしい。ビタミン剤との比較試験だったかな。。。お茶何杯分くらいのカテキンかは質問出来ずジマイでした。

それから、高血圧対するお薬で、ARB(アンギオテンシン・レニン・アルドステロン系拮抗薬)がありますが、心不全のある患者さんで経過をみたところ、飲まない人と比べて、総死亡では有意差なしだったそうです。生活の維持レベルとか、病気の発症とか、死亡以外の要因は分かりませんが、死亡だけみると有意差なしだそうです。残念。

他、酸化ストレスをみる試験で、
・マルチビタミンは無効、
・シンバスタチン(高脂血症の薬の一種)は無効
・テルミサルタン(高血圧の薬の一種)は有効           らしいです。

それから、高血圧を起こす病気の一つに、腎動脈狭窄症というのがあります。普通の高血圧の治療では内服ではなかなか血圧が下がりません。多くは、脳梗塞、心筋梗塞などの原因となる、動脈硬化が原因です。動脈にステントを置いて広げるなど、手術を考える症例は次の通り。

・2cmを超える腎動脈狭窄病変
・妊娠する女性
・腎動脈高血圧症

症例の報告では、頭痛もちで内服しても血圧が200くらいあり、腹部大動脈瘤を持っている80歳男性が、腎動脈が左右ともに狭窄しており、腎血管を治療して良くなったそうです。普段160mmHgくらいの高血圧の17歳女性、心臓が大きくなってきていて、腎血管を治療して、140mmHgくらいになったそうです。血圧190/100くらいの55歳男性、腎血管治療で良くなったそうです。

以上、講演会前半のご報告。

2011年2月15日火曜日

性器クラミジアの検査

先日の講演会で、性器クラミジアの検査ってどんなだったかなーと思ったので調べてみました。

クラミジア・トラコーマチス抗体IgA、IgGを調べればわかる様です。
IgAが感染性、活動性の指標になります。IgGは既往の指標。
でも抗原検査が検出不能例、検体採取困難例のみ算定出来るらしい。

IgA(-) IgG(-) 感染なし。
IgA(+) IgG(+) 最近、感染した可能性あり。
IgA(-) IgG(+) 感染の可能性、既往。
IgA(+) IgG (-)感染のごく初期の可能性が考えられます。

検査をした人の3割は陽性(感染)となるそうです。どんどん増えるのかな。

クラミジアは症状がないままオオゴトなったりするので、性交渉の心当たりのある人(特に感染予防をしていない人)、帯下の増加がある人、下腹部違和感のある人、不妊の人、パートナーがクラミジアの既往がある人は、早めの検査、治療をお勧めします。

では、抗原の検査は?病巣のぬぐい液のクラミジア・トラコーマチス同定。
でも肺クラミジアで偽陽性となることがあるらしい。

参考までに。
IgM・・・1週間以内に上昇。治療・無治療にかかわらず速やかに消失。2ヵ月以内に陰性化。
     ※再感染では上昇しない。
IgG・・・約1ヵ月後から上昇。数年間持続。約4年で陰性化。
IgA・・・IgG抗体に遅れて5~6週間で上昇。数年間持続。約3年で陰性化。

若い女性の急激な腹痛

2月4日に講演会に行ってきました。

今回のお勉強症例は。。。若い女性(29歳)、急に始まった右季肋部(肋骨下辺り)と下腹部の腹痛でした。
キーポイントは急性B型肝炎の既往、帯下(おりもの)の増加です。

・敗血症(ばい菌が体中を巡って血圧が下がったり、臓器に障害が出たりする致命的な状態)
・腹膜炎(お腹を覆う膜に炎症がある)
があり、画像の検査で、
・骨盤内炎症性疾患PID(骨盤の中に炎症がある)
・腸管リンパ節の腫大(リンパ節は全身にありますが、中でもお腹の中のリンパ節が腫れていて原因がそこの近くにあるのではないか?ということ)
・空腸壁の肥厚と接する脂肪組織の腫脹
があることが分かりました。

B型肝炎は、母子感染が少なくなった今、感染の経路としては性交渉が多く、性生活が活発な女性なのかな?、という印象です。もちろん全てではありませんが。帯下の増加は、性感染症の存在を感じます。

すぐに、経腟的に性感染症を起こし、お腹の中や肝臓周囲に炎症を起こす、「フィッツヒューカーティス症候群」を思い浮かべましたが、今回の症例では結局、血液培養でも原因のばい菌ははっきりせず、産婦人科の診察でも生殖器に炎症を起こしている様な所見はなく、原因ははっきりしないままでした。

抗生剤はいろんな種類があって、的が外れるとうまいこと効きません。何でも効く抗生剤を使うと、体内で共存している細菌のバランスが崩れたり、中途半端に効いた抗生剤にばい菌が進化して、抗生剤の効かないばい菌が増えたり、医療界全体の問題になっています。最近は昔と比べて病院で抗生剤をすぐ出してくれないのはそのせいです。

今回の抗生剤の選択は、
膣から侵入したばい菌をターゲットにすると、
大腸菌・・・セフトリアキソンもしくはゲンタマイシン
または嫌気性菌・・・ダラシン
大腸菌と嫌気性菌・・・セフメタゾン、アンピシリン/スルバクタム
淋菌・・・セフトリアキソン?
クラミジア・・・マクロライド
が選択されます。クラミジアの感染はクラミジア抗体IgA、IgGを測ると分かります。
今回は、クラミジアは陰性だったかな?セフメタゾールが選択された様です。

その他抗生剤選択の参考になるようなこととしては、
・無月経なら自浄作用が減るためか、経腟感染のリスクが上がる。
・血液培養でグループA連鎖球菌なら、単独での感染が多いので抗生剤をもっと絞れる。
・帯下の培養でグループA連鎖球菌なら、アンピシリン単独での治療が考えられる。
・今回はフォーカスが不明で、腹腔内は複数のばい菌が原因のことも多いので、もっと絞る(デエスカレーションする)ならアンピシリン/スルバクタムでもOK。

普段の外来では抗生剤を使う機会が少なく、抗生剤カタカナ群と知らぬ間に距離が出来ていましたが、良い刺激となりました。また仲良くやれそうです。

2011年1月20日木曜日

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンがなくなりました。キャンセル待ちもいません。ご希望の方は他病院をあたって下さい。

2011年1月4日火曜日

インフルエンザ

本日当院で今冬2人目の陽性が出ました。そろそろ流行って来るのかな。お気を付け下さい。

インフルエンザワクチンは終了。予約の方のキャンセル待ちとなります。(予約者15人未接種)

65歳以上の方への補助金は12月までだったそうです。

インフルエンザワクチン

当院で注文した分のインフルエンザワクチンは残りわずかです。来院前に、確認、予約が必要です。