2011年12月20日火曜日

ワルファリンとダビガトラン

心臓が原因で起こる脳塞栓の予防治療は、血液が固まる機能を抑えることです。

血液の凝固機能を抑える薬には、ワルファリンが使われるのが一般的です。PT-INRという検査結果を指標に行います。70歳未満は2~3、70歳以上は1.6~2.6を目標にするというのがガイドラインですが、実際の現場ではPT-INR1.6では足りない印象があり、また、2.6では出血のリスクを考えて、PT-INR2.0弱を目標に細かく調整している様です。脳梗塞を起こした患者さんの平均PT-INRは1.2前後で、脳梗塞を起こした患者さんの8割以上の人が内服していない、もしくは内服していてもPT-INRが治療域に達していないようです。また、脳梗塞を起こしていない人でも、一般的には、3割くらいの人が治療域のINRからはみ出しているようです。

ワルファリンで凝固機能を抑えていると、脳梗塞を起こしても、起こした時の症状は飲まない場合より軽くてすむという結果があるようです。

ワルファリンの重要な副作用には、「出血」があります。消化管潰瘍からの出血、脳出血などです。

ワルファリンに抗血小板薬を追加すると、明らかに出血のリスクが上がることが分かっています。それでも併用を考える場合は、INRのコントロール良好でも脳梗塞が再発した場合、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞、一過性脳虚血発作の既往がある場合、虚血性心疾患を合併している場合、身体にステントが入っている場合です。

ワルファリンでPT-INRのコントロールが良い人は、出血が止まりにくくなっているので、大きな手術や外部から圧迫出来ない内視鏡の処置などがある場合は、3~5日前に中止し、ヘパリンでコントロールします(APTT1.5~2.5倍まで)。術後は、ヘパリンとワルファリンを同時に再開し、PT-INRが治療域に入るとヘパリンが中止されます。最近では、抜歯や白内障手術でも内服は辞めない方が良いと言われています。中止すると、5/500例は血栓塞栓症を起こすと報告されています。

ワルファリン内服者では、抗生剤で血中濃度が上がることがあり、注意が必要です。

ワルファリンを使ってはいけない人には、出血するような疾患を持つ人、肝障害を持つ人です。

凝固機能を抑える薬として、ダビガトラン(プラザキサ)も最近選択肢の一つとして上がっています。講演会の話をふまえつつ、比較してみました。

ダビガトラン
75mg132.6円×2=265.2円/日×30日=7956/月 3割負担で2386円/月
110mg232.7円×2=465.4円/日×30日=13962/月 3割負担で4188円/月
ワーファリン
1mg9.6円 1日5mg飲むとしても48円/日×30日=1400円/月 420円/月
一桁違うのは辛いですね。

タビガトランのメリット
ワルファリンより脳血栓塞栓症の予防により優れている
頭蓋内出血が少ない
消失が早い(12時間)緊急時にはすぐ辞めれる
効果発現が早い(2時間)

デメリット
消化器症状が多い、しかしPPIは吸収が低下するので併用出来ない。H2 拮抗薬を使う。
消失が早い→1日2回→飲み忘れに注意
指標が要らない、採血要らない、痛くない、その分安くなる(?)
ワソランと併用出来ない
腎機能注意!!
消化器からの出血に注意。
一包化出来ない。湿気を吸うから。
1日2回のむ必要がある。
まだ14日しか処方出来ない。

頭蓋内出血は、アスピリン、クロピドグレル、ワーファリン、ベラパミル、アミオダロン、NSAIDsとの併用でリスクが上がる。また、血圧のコントロールが大切になってくる。

健康と、お金は比べられないと考えると、ダビガトランがおすすめです。しかし、ワルファリンから乗り換えるには、PT-INRの測定など、少々手間が追加されるようです。患者さんのライフスタイルに合った、薬の選択が必要そうです。